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おっしゃ! 走ってみるベ

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スパルタスロン完走記 No.3 「レース・つづき」

 サンガスまであと少しという150km付近で、なんだかトイレが近くなってきました。用を足しても、またすぐに尿意が。。。走っている振動で体内のどこからか出血しているらしく、暗くてよくわからなかったのですが、どうやらこの付近から血尿が出ていたようです。ミホチャンに声をかけ、何度も立ち止まってしまう始末。その間は、ミホチャンは歩き。自分は、走って追いつくといった苦しいインターバル状態が、続きました。

 スブラギ!? を焼いていたリルキア、CP43(148.5㎞・1時58分)で、ミホチャンは「お茶漬け」を預けていたらしく「これなら、食べれるかな?」と半分差し出してくれました(涙)。ずーっと固形物を食べれなかった自分。お茶漬けが、スルスルっとお腹に入っていきました。ちょっと塩気があり、そしてお米の風味が久しぶりに食欲を湧かせてくれました。生涯でこれほど美味しいと思ったお茶漬けはありません(笑)。同時に、エイドにお茶漬けを置いているミホチャンを見て、目からうろこでした。自分も何かご飯物をと思いましたが、それほど重要視していたわけではなく、ゼリーやフルーツ缶などの簡易的なものだけで行けるだろうと油断していました。それだけでいけるほど、実力がなかった。。。ものすごい反省を今でもしています。

 お茶漬けもお腹に入って、さぁ、いよいよサンガスへ。ところが、ここでミホチャンが睡魔に襲われるように。。。ミホチャンは、持参していたスーッと目が覚めるジェル(東京の接骨院でもらったそうです。非売品らしい)を首に塗って、そして目覚ましがわりにハッカ系の飴玉を二人で口にほおばって出発しました。

 前方上方に、ハイウェイの黄色い明かりが帯をなして見えるようになり、それが見上げるような目線で続いています。チカチカとサンガスの山頂に向けて点灯しているライトが見える頃には、もう九十九折(つづらおり)の上りが始まっていました。まるで大きな蛇がグネリグネリと蛇行しているような道です。そこをランナーのライトが、チカチカと上っていくのが見え、「あそこまで行くんだね。。。」と二人で苦笑いして走っていました。
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▲サンガスの登山道入り口のCP

 ミホチャンとは、「上りは全部、歩き」と割り切って、すべて歩き。(でも、ミホチャンは歩きも早かった・・・離されて追いつくのに結局走っていた自分・・・)そしていよいよ登山口前のCP47(159.3km)に到着(午前4時10分頃)。貯金は5分減って55分。ここで、血圧を測っていたランナーが。何かここは血圧を測らなければならない場所らしく(実はそうではない・勘違い)、ミホチャンと一緒に血圧測定に並んでいました。結局は、ミホチャンだけ測って、すぐに全員必須でないということを知り、二人で苦笑しながら登山道へ。
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▲足元に気をつけながらサンガスを上る


 一気に足場がガレキに変わり、ランではなく、もうそれは「登山」と呼ぶしかない状態になりました。足を踏み外したら、大変な大怪我をするのではと思うほどの道の狭さ、急斜面、そして岩場! 這うように。。。そして慎重に上りました。ミホチャンは、「明るい時には、下が見えて登れないねぇ」とか「一人では登れないよねぇ」と話しかけてくれましたが、自分はそれに対しゼイゼイ息を切らしながら「そうだね、本当、そうだね。。。」と返事をするのがやっと。でも内心「結構楽しいかも♪」と思って、少しずつ上って行きました。途中、外国人ランナーが走って追い越していったので、ミホチャンと二人で「あら、ありえねなぁ~っ!」と秋田弁で連呼! そうこうしている間に、ミホチャンが「もう着くよ」と声をかけてくれて、いよいよ山頂に。山頂のCP48(161.6km地点)では、めちゃくちゃ寒い朝方なのに、スタッフが笑顔で迎えてくれました。
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▲サンガス頂上
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▲サンガス頂上のスタッフ(自分の死にそうな顔がお恥ずかしい)

 夜空をちょっとの間だけ楽しんで、時間を気にして下りに向かう二人。今度は、キツイ傾斜の下りが続く・・・。ここでは、CW-Xが威力を発揮。膝の辺りから太ももにかけて、スピードはないものの安定して下ることができました。しかし、足が踏ん張っている状態が続くため、右足の甲がシューズのベロに当たったり、左足の親指の爪などが痛くなってくるなど、「とうとう、ここできたか」という、いつものウルトラのトラブルが発生しました。でも、そんな痛みは予想通り。これまでのお腹の調子の悪さに比べれば、トラブルには入らない! 強気でミホチャンと一緒に下って行きました。


 しばらく下って。。。越えたサンガスの明かりが遠くに見え始めた頃、うっすらと夜が明けてきました。気温は、何度くらいだったかわかりませんが、かなり寒く、吐く息が白くライトに照らされるのが見える状態でした。ガスがかかり、走っていてもその雰囲気に溶け込むような静けさ。ミホチャンとの会話もなくなり。。。知らず知らずのうちに蛇行歩行。今度は、自分が睡魔に襲われていました。ミホチャンにお願いして、数回ビンタをしてもらって気合を入れなおし!(ここら辺は、ミホチャンもキツそうだった) 二人でまた走り出しました。
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▲クラムチャウダーを口にすることができたCP

 明け方午前7時近く、CP52(172.0㎞地点)のネスタニに到着。依然、胃の調子は本調子とは行かないものの、預けていたクラムチャウダーを口にすることができ、なんとかお腹に流し込めるように。しかし、朝方の蛇行歩行で、貯金は30分にまでに減ってしまっていました。
 午前7時を過ぎ、明るくなってからは、ほぼ平坦な道のりが続きました。小さな村なのに、沿道に出て応援してくれる地元の子どもたち、そしてその家族。自分は、目はうつろながらも、笑顔で応えるようにしましたが。。。笑えていたかどうか(苦笑)。
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▲この朝方の時間帯、応援が本当にありがたい

 この頃は、走っていても、歩いていても、少しずつミホチャンとは並走できなっていました。また、尿意が酷く、その尿もいよいよもって大丈夫かというくらい真っ赤。それでもミホチャンは、少し離れると歩いて自分を待ってくれていて、追いつくとまた走り出すという繰り返し。自分のペースに合わせてくれていて、とってもありがたかったです。そして自分も、自分なりにそれに応えて、絶対諦めず、足を運んで追いつき、離されては追いつきで、決して見えない位置まで離されることはありませんでした。

 日が高く上り始め、エイドにジャージの上とアームウォーマー、そして手袋を預けようと思いましたが、「直射日光で体力を奪われるくらいなら、少しくらい暑くてもいいから素肌を覆うべき」というミホチャンのアドバイスを受けて、アームウォーマーと手袋、ロングタイツはそのままで、ジャージの上だけを預けました(これが正解だった)。日が高くなるにつれ、気温はまた上昇。しかし、それなりに暑さは感じるものの、直射日光を浴びていないせいか、前日よりも肉体的に苦しくなかった感じです。ただ、2~3kmごとに血尿が出る(今思えば、急性膀胱炎ぽかった)ので、それが辛くて辛くて。ミホチャンは、そのあまりにも辛そうな私を見て「CP60のテゲアでやめる?」と聞いてきましたが、「ここまで来て、やめるもんか! ひっぱって来てくれたミホチャンがそういうこというなよな!」と怒鳴って(親子喧嘩状態)走りました。それがあって、二人とも、ゴールしたいという思いがますます強くなっていきました。
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▲坂本さんからアドバイスをもらったCP60・テゲア

 CP60(195.1km地点)のテゲアに到着が、午前10時06分。ここで、信じられない光景を二人で目にします。まだまだ余裕そうな若いランナーが、ゼッケンを外して続々リタイヤしているではないですか! 焦ってボードをチェックすると、自分たちの貯金は55分。まだ大丈夫だと思う反面、この先、一気に貯金がなくなるほどハードなアップダウンがあるのかと不安が募りました。ここで、ウェルネスの坂本さんがいらしたので、さっそくミホチャンと一緒に、「この時間でゴールまで行けますか?」と聞きました。坂本さんは、「やめようと思っているのか?」と切り替えします。「いえ、ゴールしたいです」というと、「じゃ、行くしかない!」と背中を押してくれました。「二人で励ましあって行け。上りは全部歩いても大丈夫。232㎞地点まで上りが続く。トップ選手も血尿だ。水分をできるだけ取って行け!」と教えてくれました。ミホチャンと自分は、坂本さんの言葉を信じ、あらためて「上りは温存。。。下りと平坦はできるだけ走る!」と確認して、ゴールを目指しエイドを出ました。
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▲上りは徹底して二人とも攻めの歩き

 200キロを過ぎると、これでもかと追い討ちをかけるアップダウン。時どき襲う眠気と二人で戦いながら進みました。ふと気づいたのは、上りを全部歩いても、下りと平坦をそれなりに走れれば、貯金は減らないということ。どのCPで残り時間を確認しても、1時間前後の貯金で推移していました。これが一気に気持ちを楽にさせてくれました。
 この辺りの下りのミホチャンは、素晴らしかった。体格のいい外国人選手の横を、スイスイと追い越していく。。。身長なんか、外国人選手の腰よりちょっと上くらいなのに。。。無駄のないフォームで、淡々と走っていました。自分は、ヒモでもつけられたように、「無」になってついていきました。
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▲血尿が頻繁に出て、尿意が頻繁に。。。苦しい。椅子に座ると立てなくなりそうで・・・

 いつのまにかお昼が過ぎ、ゆっくりゆっくり日が傾きはじめ。。。CP69(226.3キロ地点・15:00到着)で、また貯金が1時間以上に。残り20キロ弱を、4時間で走ればいい計算になり、二人で「時間内完走が見えてきた」と思い始め。。。しかし、体力的にも限界が近づき(いやもう限界を超えていたかも)、これまで走っていた下りも、この辺になるとつらく、歩く時間帯が多くなり。。。そして、歩くと睡魔が襲ってくる状態という悪循環に陥っていました。
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▲完走を確信して親子で一枚(ラスト10キロ地点のshellのガソリンスタンド)

 232km地点を過ぎると、一気に下りへ。しばらく下り、ゴールまでラスト10.1㎞のCP72(236.3km地点)shellのガソリンスタンドが見えてきました。もうゴールはすぐそこ。そんな気持ちの余裕も出たのか、ここでは、ミホチャンと二人でエイドのスタッフと片言の英語で会話する余裕も。ミホチャンを指差し、「My mother!」とジェスチャー。エイドスタッフ全員、ビックリ顔!(ゴメンナサイ、うそです・笑)「凄い親子だ!」みたいなことを言われ、二人で大笑いしていました。
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▲地元スパルタの子どもたちが自転車で迎えに来てくれた

 そしていよいよスパルタの街が眼下に。。。ラスト5キロ付近、自転車に乗った少年が、迎えに来てくれました。どうやら、ゴールするランナー、一人ひとりに、ゴールまでついてくれるようです。嬉しい反面、その少年、車にひかれそうになったり(@_@;) ミホチャンとハラハラしながら並走しました。
 この辺りで、ミホチャンと「手をつないで一緒にゴールしようね」と話していましたが、ミホチャンいわく「大友くん、だいぶ、おしっこしているから、ちゃんと手を洗ってね」とキツイ一言(゚∀゚;) そりゃそうです。エイドでもらったお水で、入念に手を洗わせていただきました(笑)。
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▲ここまで引っ張ってきてくれたミホチャン
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▲最後のCP74.ゴールまであと1.8km

 そしてゴール手前、最後のCP74。ここからラスト1.8キロは、すべて二人で歩き通しました。街中に入ると、道行く人が立ち止まって拍手で「ブラボー!」、カフェでお茶している人全員も「ブラボー! ブラボー!」の大声援! マンションのベランダから、すれ違う車もクラクションを鳴らして「ブラボー!」の声! すべての皆さんに、ミホチャンと一緒にガッツポーズで応えました。後ろを見ると、パトカーがついてくれていて。。。まるで英雄のようなあつかいです!
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▲カフェにいる人たちも大きな拍手で迎えてくれました
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▲ゴールを迎えてくれた皆さん


 ミホチャンとも「気持ちいいね!」と笑顔の会話。そして最後の角を曲がると、遠くに人だかりが薄っすら見えるよう。。。「あそこがゴール!?」そして、ゆっくり二人で歩を進めると、能渡さんの旦那さんやわたなべ先生、日本人応援団の皆さんが大拍手で走って迎えに来てくれました。ドンガメさんが、「よくあの状態からゴールまで来たね!」と言ってくれたこと、二階堂さんの「二人とも、おめでとう!」という言葉が耳に入ってきて、もう目頭は熱くなって、涙をこらえるのが精一杯。涙の向こうに、夢にまで見たレオニダス像が見えてきて、ラストはミホチャンと手をつなぎ、その大観衆へ飛び込みました。

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▲レオニダス像の足にタッチしてゴール(スパルタスロンオフィシャルHPより)
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▲念願のレオニダス像にたどり着く(写真提供・ドンガメさん)

 30日午後6時18分(35時間18分)。二人は、階段を駆け上り、レオニダス像の大きな力強い足にタッチし、大きな大きな拍手の中、ゴールを迎えました。ゴールしてすぐに、メイヤー(スパルタの市長さん)から聖水をいただき、オリーブの冠をかぶせてもらい、祝福の抱擁とキス。どっしりと重いメダルをいただき、ミホチャンと一緒にレオニダス像の前で、記念写真を撮りました。
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▲医務室前で体の状態を聞かれる(二階堂さんと高井さんが通訳に)


 レース後、私はシューズ、ソックスを脱がされ、足を洗ってもらいました(私だけでなく、これは完走者全員)。その後、二階堂さんや高井さん(二人とも残念ながら完走できなかったそうです)が通訳してくれて、血尿のことを医師に伝えてくれました。私は医務室に運ばれ、採血。そして点滴も受け、その後、深い眠りにつきました。右足の甲がボッコリ腫れていたので、その間、スパルタの病院に搬送。レントゲンを撮ってもらいましたが、骨には異常はなく、炎症だけということで、点滴終了後にタクシーでホテルに戻りました(血尿もその時はおさまっていて、特別処置はなし)。戻ったのは、午後8時30分くらいだったと思います。医療費、タクシー代はすべて大会主催者側の負担。ランナーが負担する部分がなかったことに驚きです。ものすごい丁寧な、そして素晴らしい対応に、ここでも感激してしまいました。
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▲245.4㎞の道のりは、一生忘れることの出来ない貴重な体験でした

 なお、ホテルでは、参加者が夕食の最中。食事中の二階堂さんの助けを受けて、荷物を大会事務局側から受け取りました。部屋に入りると完走したお二人(齋藤さんという方と、club MY☆STARの佐藤さん)が、すでに休んでいて、自分も動かなくなった体に鞭打って!? シャワーを浴びました。そしてベッドに横になった途端、吸い込まれるように意識がなくなっていきました。。。

(午後8時から開催されたスパルタ市の歓迎レセプションには、参加できませんでした。。。悲。。。次回があればぜひ参加したいです)


スパルタスロン完走記 No.4 「レース後」に続く

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by takanori922 | 2006-10-10 22:39 | ウルトラマラソン
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